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アラブ革命はなぜ起きたか 〔デモグラフィーとデモクラシー〕/藤原書店
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著者のエマニュエルトッド氏はフランスの人口統計学者で、家族形態や識字率・出生率の変化から世界各地の社会のあり方や近代化の行方を論じる手法を取っているようです。

1976年の時点で、それまで低下し続けていた、乳児死亡率の上昇が始まった点を根拠とし、将来のソ連の崩壊を予測したことで有名です。

識字率の上昇(50%を越える)は、父親は文字が読めないが、息子は読めるという現象を生み、伝統的な権威や秩序が破壊される。
ここで価値や秩序を自ら作り出さなければならない近代社会への移行がはじまり、移行期には社会的混乱や危機が起きるとトッド氏は指摘しています。

チュニジアから始まり、現在アラブ社会が全般に何かしらの移行期にあるようだとは感じますが、その内戦などの暴力的な側面から否定的に見る向きが多いように思います。
しかし、例えばトッド氏の母国のフランスを例にとっても、フランス革命以降、共和制→帝政→共和制と混乱が続き、共和国として安定するまでに1世紀近くの時間を要しました。
その間は下手をすると、アラブ社会で起こっている以上の暴力と破壊が生じたわけで、我々は単にそれを忘れてしまっているだけではないか。
見方が厳しすぎるだけなのではないかという指摘にもうなずけるものもあります。

しかし、一方でかつて多くの国で繰り返された暴力的な悲劇を、21世紀の現代にわざわざ繰り返す必要があるのかとも思います。
必要なのは、近代化・価値観の創造といったものであって、暴力そのものではないはずです。
もちろんの事、化学兵器の使用などが正当化されるはずもありません。
現代人の英知を持って、社会の移行を行いつつ、暴力等を抑制する試みを行ってほしい、そのように願います。

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